
家に誰もいない。
シーン…。
外を見ると、煙が立ち上っていない。いつもはカマドの煙が出ているのに、おかしい…。
外に出てみると、馬小屋の方があわただしい。皆そこへ集まっているんだ。
嫌な予感がする…。まさか、まさか…。
…。
……。
………。
そこでは、フジと村人達が意気消沈していた。
若い村人「フジ様、これはもう…。」
フジ「…。」
馬が倒れている。それも1頭や2頭じゃない。
ほとんど…。
あのフジが涙ぐんでいる。見た目がどう見てもアレのフジが。
アヤメ「フジ…。」
あれは、お父様が都へ旅立ったすぐの頃…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
フジ
「アヤメ様!家畜を育てる上で一番大切なことは何か、ご存じですか| `Д´|!?」
アヤメ「はあ…。」
フジ
「”愛情”です!愛情がなければ、いい家畜は育たないんですよ!家畜を上手に育ててあげられるのは、愛情を持った優しい人間だけです彡^・∋(≧ω≦。)!」
アヤメ(そんなイカツイ顔で言われても…。)
フジ
「エサをあげるときは、体を撫で話しかけながらあげるんです\(^^ )!
そして、こまめに寝床を掃除するんですよ!ご存じでしたか!?」
アヤメ
(ツキノの面倒を見るなんて言わなきゃよかった…。)
フジ
「ツキノが猪から逃げたのも当然です(*’へ’*)!馴れていない土地に連れてこられ、母親がわりだった馬と引き離され、そうかと思えば荒ぶった猪の大群と鉢合わせる!それはそれはもう、逃げたくもなりましょう(/へ\*)!」
ツキノ「む~(-“- )」
アヤメ「わかった!わかったってツキノ!噛まないで!」
フジ
「ほら見て下さい、この馬を!
私たちの愛情の賜物です!私がお産のときに初めて取り上げたんですよぉ(●´ω`●)
難産でして~、母馬も初産でしたし。
それがどうです!いい毛並みでしょう。立派に大きくなって!それに、乗ってみればわかりますけど、もう凄いんですよ!私たちが育てている馬たちはモロカタ、いや日向を代表する馬と言っても過言ではないっ((o(>皿<)o))!今では優秀な子馬を何頭も生んで…。」
アヤメ(…。これ終わらない。)
…。
……。
………。
フジ
「そういうわけで、私たちが多くの馬の面倒見なければならない中、ツキノをみて下さるのは助かります。まずは近場の散歩をさせて下さい。土地に馴らせるんです。あと、山すそは止めてくださいね。あそこは…。」
アヤメ「うん…、はい(..;)。」
(お父様がいない間、モロカタを取り仕切る父の右腕。畜産にかける情熱は父と同等かそれ以上。
…でも私は別に畜産に興味があるわけじゃない。好きな人なら馬が合うんだろうけど。フジがこれでもかと言葉で説明してくれたけど、それじゃあ伝わらないよ…。)
…。
……。
………。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
お父様が旅立って数か月した後、馬が一頭食欲が落ち、倒れこんでいた。軽い風邪かなと、フジが付きっきりで看病していたけど、それが一頭、二頭と増え数日して…。
フジは”何も心配ありません”って言っていたけど、大丈夫じゃなかったんだ。
どうして教えてくれなかったの…?
フジ
「生きている馬は離れの馬小屋に移動させよ。馬小屋は念入りに清掃するように。馬番以外は家に帰させ、飯の支度をさせよ。」
村人
「フジ様、残念です。もう少しで出荷できたというのに…。」
モロカタは畜産が盛んだ。その一つが馬だった。大きな利益になる代わりに、飼育はすごく大変。それが、いざ出荷のときに、こんなことになるなんて…。
イホツミ「姉ちゃん、俺の馬もダメだった…。」
アヤメ「イホツミ…。」
あのイホツミも落ち込んでいる。いつもヘラヘラして私を子馬鹿にしてくるイホツミが。
イホツミの馬…お父様が都から連れてきた馬。母牛を失ったツキノと仲が良かった馬も…。
ツキノ「…。」
アヤメ「ツキノ、あなたは元気そうね。いや元気ではないか…。」
ツキノがいつにも増しておとなしい。
馬とは別の生き物だからか、馬の病にはかからないようだ。でも元気がないように見える。そうだよね。母牛を失って、母親代わりだった馬もいなくなって…。
何だか似てるね、私たち…。
フジ
「…。アヤメ様、馬たちをここから離れた場所に運びます。ツキノを家に連れて行ってもらえますか?
今日はツキノの面倒まで見る余裕がありませんので…。」
対して力仕事もできない私たちがいては、フジたちの邪魔になる。
そうだよね。私にできることはこのくらいだ。ちょっとでも助けになることをしないと。
何より、今のフジたちを見ている方が辛い。
”私がお産のときに初めて取り上げたんですよぉ(●´ω`●)”
大きくなれば出荷して、いなくなってしまう馬たち。その直前でこんなことに。モロカタにとっては大きな損失だ。でもそれだけじゃない。あれだけの愛情と苦労をかけたものがなくなったんだ。
必死に助けようとして、結局助けてあげられなかった…。
アヤメ「ツキノ、行こう…。」
ツキノを家へ連れて帰ろうとするが、動かない。母親がわりだった馬が横たわっている。何が起きているか、わからないんだ。
アヤメ
「私たちがいても、かえって邪魔になるから。見ててもただ辛いだけじゃない。ほら、行、こ、う…。」
ツキノはテコでも動かない。弱った。
若い村人
「フジ様。先回りして穴を掘っておきます。その間に運び出す準備を。」
フジ「あぁ、そうだな。アヤメ様。無理しなくてもいいです。ツキノもさみしいのです。ここに置いて帰ってください…。」
いっぱいいっぱいのフジたちに、これ以上負担をかけたくない。私もフジたちを見ているのが辛いのに。何とかして連れて帰らないと。
でもテコでもツキノは動かない。けっこう大きくなったもんね、ツキノ。
…。どうしよう。本当に動かない。
相手は動物、どうしたら伝わる?
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都城市立図書館(外部リンクに飛びます)
都城中心市街地にある図書館。でもただの図書館ではありません。とにかくでかい、広い。木をふんだんに使った内装もオシャレ。本の蔵書数も多分すごい。カフェがあってWifiもあるし学生もよく勉強しに来る。近くには映画館やらレストランやら子供の室内遊び場やらある。絵本もたくさんあるので、子供を連れてきたとき絵本コーナーに行きたがります。まるで都城じゃないみたい…。
今回、サイト制作をするための参考資料を探すのに、大変助かりました。都城市の成り立ち、地理的特徴、畜産の歴史…。こちらの稚拙な疑問に対し、参考となる資料を丁寧に紹介してくださったレファレンスサービスの皆さん、広い図書館の中で子供がはしゃぎすぎてほとほと困っていたとき、小さな紙の独楽を貸して下さったスタッフの方、ありがとうございました。
