3週目愛しみDianthus
ナデシコの花言葉:無邪気、純愛

アヤメ「あなたの名前は”ツキノ”よ。」
ウシモロ「アヤメ、世話はフジら男衆に任せればよい。お前は時々様子を見るくらいでいいのだぞ?」

私は子牛に”ツキノ”と名付けた。

アヤメ「私はお祖母様があんな風になるなんて、思いもしなかった。大好きな機織の仕方を忘れたり、急に怒ったり泣き出したり。見ているのがつらかったの…。」

ウシモロ「年をとれば、お祖母様のような病になる者は多い。そういうものなのだ。特別珍しいことではない。世話は私がするから、お前は何も心配せずとも良いのに。」

…やっぱり伝わってない。私はお祖母様の病が特別かどうか聞きたかったわけじゃない。ただ、つらかった感情を共感して欲しかっただけなのに…。

お祖母様とツキノに接しているとき、気づいたことがある。いつもと違ってよく喋る。なぜかはわからないけど、ひょっとしたら、お祖母様の病が少しはよくなるかもしれない。
そしたら、果たせる。お祖母様との”約束”を…。お祖母様に伝えたいことがあるんだ。都に行くのはその後!言っても伝わらないお父様に頼らず、自分でやる。できることを全部やるんだ

フジ「アヤメ様。お祖母様がまたどこかへ行かれました。」
ウシモロな、何だと!?大変だ!さっ、探すんだ!なぜ皆落ち着いている!?」
アヤメ「いつものことよ。でも行く場所は大体決まっているから。」
ウシモロ「母様はそこまで老けてしまったのか…。」

最近、お祖母様はよく出かける。誰にも言わずに
でも行く場所は大体決まっている。最初は皆大騒ぎしていたけど、今は誰が先に見つけるかで競争するようになった。

イホツミ「オオヒナお前歩いて探す気か~?馬に乗れば楽なのにな。親父からもらった都の馬、やっぱ違うわ~。」
オオヒナ「姉さん、僕田んぼを探してみるから…。また溝に落ちてなければいいけど。」

お祖母様の行く先、今日はアズキ畑を探してみよう。もうすぐ夕暮れ。こんな時間に出かけたなら、アズキ畑にいるかもしれない。前もこのくらいの時刻に、畑の前で何か言いながらポツンと座っていたんだ。

アヤメ「ツキノ!行くよ!」

ツキノをひもでくくる。アズキ畑でお祖母様とツキノを引き合わせれば、何かいい刺激になるかもしれない。私は子馬を引いて散歩したことがある。ツキノとだって。
すごくおとなしい。ひょっとして、私が今どんな気持ちなのか、わかってくれているのかも。
私はツキノと気持ちを一つにして、独りぼっちになっているお祖母様のいるアズキ畑へ進――まな~い道草食ってて進まな~い。おまけに動きが遅い。馬と全然違う。これじゃ夜になるじゃない!

…。
……。
………。

アヤメ「アズキが…。」どうにかツキノを引っ張って行って見た光景。
お祖母様はいない。でも畑が荒らされている。それだけじゃない。うごめく黒い物体…
猪だ!それもたくさん!

アヤメ「や、やめなさい!

追い払おうとしたが、逆効果だった。毛を逆立て威嚇してくる!

シュー!シュー!

まずい。荒ぶった猪がこんなにも恐ろしいなんて!

ツキノむ~!

ツキノが今までに見せたことのない動きをする。ツキノ、ひょっとして、ひょっとして私を守――らな~い!逃げた~!
全速力で逃げた~!!道草食わずに全速力で逃げた~!!

ツキノ「む~」

シューシュー!

今にも突進しようとする猪。その時、はっと上空を見た。
鳥が飛んでいる。次の瞬間、

バシュウ!

イノシシに突き刺さる弓矢!そこには颯爽と馬にまたがる男。弓矢を使い切ると、剣を抜き突進する。
私を助けてくれたんだ。猪達が一斉に逃げ出していく。
この人…モロカタの身なりじゃない。ひょっとして都から来た人?馬を乗りこなし、鷹を携え、弓を扱い、そして…強い
これって、どう見てもアレよね。まさか、まさかひょっとして、この人が私の運命の王子さ…

???「君は…”馬と鹿”の話を知っているだろうか?」


<補足>

都城市にそびえる”霧島連山”。そのふもとに”高千穂牧場”という観光牧場があります。
ここでは、ヤギや馬・牛など自然の中で育った動物と触れ合えることができ、手作り体験・ショッピング・食事もできます。
子供に動物と触れさせてみたい、霧島連山の自然の中でゆったりとしたい、食事も買い物もしたい。
そんなとき、私も家族ずれでよく来ます。